
確定申告を考える前に、対象となる年を決める
所得税は、一月一日から十二月三十一日までに生じた所得を一つの年分として計算します。たとえば十二月に配信して、報酬が翌年一月に振り込まれた場合、通帳の入金日だけでは何年分として扱うかを決められません。報酬が確定する条件や支払明細を確認できるようにし、獲得、確定、換金申請、振込の各日付を残しておきます。
複数の配信アプリを利用している場合も、アプリごとに別の年として考えるわけではありません。同じ年に得た配信報酬、動画広告、企業案件、紹介報酬などを一覧にし、自分に関係する収入を見落とさないようにします。物品を受け取った案件や外貨で支払われる案件は、契約や明細だけでは判断しにくいことがあります。金銭以外だから除外するのではなく、内容と受取日が分かる資料を残したうえで確認してください。
申告書や控除額、判定基準は改正されることがあります。前年に使った解説やSNSの投稿をそのまま当てはめず、実際に申告する年分の手引きを開くことが出発点です。この記事では整理の順番を説明しますが、最終判断は対象年分の公的案内と自分の条件を組み合わせて行います。
「20万円以下なら申告しなくてよい」と先に決めない
よく見かける「20万円」という基準は、すべてのライバーに共通する売上の上限ではありません。給与所得者について、給与の受け取り方や年末調整の状況など一定の前提を満たす場合に、給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円を超えるかどうかを見る場面があります。ここで使うのは、配信アプリから振り込まれた総額ではなく、収入から必要経費を差し引いて計算する所得です。
給与を二か所以上から受け取っている、年末調整を受けていない、給与収入が一定額を超える、配信以外にも所得がある、還付を受けるために申告するなど、条件が変われば確認する箇所も変わります。そのため、「配信の振込額が20万円以下だった」という一点だけでは結論を出せません。給与の源泉徴収票、配信の年間明細、ほかの副収入を同じ場所に集めてから判定します。
所得税の確定申告が不要となる条件に当てはまる場合でも、住民税については住所地の市区町村からの案内を別に確認してください。所得税と住民税は同じ手続きではありません。「所得税の申告が不要だったから、ほかの手続きも全部不要」と広げないことが大切です。
売上、必要経費、所得、入金額を分ける
配信に関する数字は、少なくとも四つに分けて整理します。一つ目は、配信や案件によって得た総収入です。二つ目は、その収入を得るために必要だった支出です。三つ目は、総収入から必要経費を差し引いて計算する所得です。四つ目は、手数料や源泉徴収などが差し引かれた後に銀行口座へ入った金額です。
配信アプリの画面では、ポイント、ダイヤ、ジェム、コインなど独自の単位が使われます。画面に表示された数字と日本円への換算額、換金申請額、振込額が一致しないこともあります。振込額だけを記録すると、手数料や源泉徴収が差し引かれる前の金額が分からなくなるため、報酬画面と支払明細を組にして保存してください。
記録には、サービス名、対象期間、表示された報酬、換算後の金額、手数料、源泉徴収額、振込日、振込額を入れます。外貨の場合は、通貨の種類と円換算の資料も残してください。未換金残高や受取期限があるポイントについては、いつ収入として扱うかを画面だけで決めず、報酬が確定する契約条件を確認できるようにします。
この分け方をしておけば、通帳の入金額と配信画面の数字が違っていても、差額の理由を説明できます。差額を「たぶん手数料」と推測して埋めるのではなく、明細上の名称と金額を確かめます。画面を後から開けなくなることもあるため、月ごとの保存を習慣にすると、年末に不足資料を探す負担を減らせます。
配信収入の所得区分を一律に決めない
「ライバーの収入は必ず雑所得」「開業届を出したから必ず事業所得」といった一律の説明はできません。国税庁は、事業所得に当たるか、業務に係る雑所得に当たるかを、活動が社会通念上事業といえる程度で行われているかなど、実際の状況に基づいて判断する考え方を示しています。帳簿書類の保存状況も判断に関係します。
確認するときは、配信の頻度、継続期間、収入規模、収益を得るための活動内容、設備や外注の状況、帳簿の有無など、自分の活動を説明できる資料をそろえてください。副業として始めたばかりの人と、継続的に配信や案件を事業として行っている人では、同じ結論になるとは限りません。
所得区分が変わると、申告書の記載や損失の扱いなどにも影響します。配信仲間の申告方法をそのまま真似せず、迷う場合は事実関係を整理したうえで税務署や税理士へ確認してください。「配信をしている」という説明だけでなく、どのように報酬が決まり、どのくらい継続し、帳簿をどう付けているかまで伝えると相談しやすくなります。
必要経費は「配信に使った」だけで全額にしない
必要経費を整理するときは、支払ったものの名前だけで判断しません。国税庁は、事業所得の計算では総収入金額から必要経費を差し引く一方、家事上の費用は原則として必要経費にならず、業務に必要な部分を明確に区分できる家事関連費は、その業務部分を必要経費にできると案内しています。
スマートフォン、通信費、照明、マイク、衣装、化粧品、家賃、電気代などは、配信にも私生活にも使う可能性があります。「配信で一度使ったから全額」とは決めず、購入目的、利用期間、配信で使った範囲、私用との分け方を記録します。個別の費目が経費になるかは、名称ではなく活動との関係と実際の使い方で確認します。
領収書には、日付、支払先、金額だけでなく、何を購入し、どの配信や案件のために使ったか分かるメモを付けます。カード明細だけでは購入内容が分からない場合があるため、注文履歴や領収書も保存してください。家族名義のカードで立て替えた支払い、ポイントを使った購入、返金があった取引は、支払者や実負担額が分かるように残してください。
判断に迷う費用は、最初から消すのでも全額入れるのでもなく、候補として別にしておきます。相談時に、購入理由、利用割合、配信との関係を説明できれば、具体的な条件に基づいて確認できます。

源泉徴収があっても、申告不要とは限らない
支払明細に源泉徴収額が記載されている場合、その金額は報酬からあらかじめ差し引かれた所得税等として申告書の計算に使うことがあります。ただし、源泉徴収されていることと、確定申告が不要であることは同じ意味ではありません。年間の所得と控除を計算した結果、追加で納める場合も還付になる場合もあります。
YUIへの相談でも、支払調書を確定申告書へ添付する必要があるかという質問がありました。現在の国税庁の案内では、給与の源泉徴収票などは申告書への添付または提示が不要とされていますが、税務署等で申告書を作成する際には内容確認のため持参するよう案内されています。配信報酬についても、添付の要否と、金額を正しく記載するための保存を分けて考えます。
支払調書が届かない、明細の名称が分かりにくい場合でも、通帳の入金額だけに置き換えません。契約先へ年間明細や源泉徴収額を確認し、報酬総額と差引額を対応させます。申告書へ何を添付するかは、提出方法と対象年分の案内を確認します。
一月から十二月まで、月ごとに資料をそろえる
確定申告の直前に一年分を思い出そうとすると、消えた報酬画面や不足した領収書を復元できないことがあります。月末ごとに、配信アプリの明細、案件の請求書、銀行の入金、カードや電子決済の支出を照合します。翌月入金や未換金がある場合は、入金待ちとして分けておきます。
売上の表には、発生日または報酬確定日、サービス名、内容、総額、手数料、源泉徴収、入金予定日、入金日、実際の入金額、明細の保存先を記録します。経費の表には、支払日、支払先、内容、金額、配信との関係、私用を含むか、領収書の保存先を記録します。項目名を毎月変えず、同じ形式で続けると年間集計がしやすくなります。
国税庁は、収入金額や必要経費の日々の取引を記帳し、取引に伴って作成または受領した書類を保存する必要があると案内しています。所得区分や前々年の収入金額によって保存する書類や期間が変わるため、全員に同じ年数を当てはめません。自分がどの区分に当たるかを確認してから、必要な保存期間を決めてください。
電子メールで受け取った請求書やオンライン上の明細は、紙に印刷しただけで終わらせず、電子取引の保存要件も対象年の案内で確認します。ファイル名に年月、サービス、内容を入れ、元データを探せる状態にしておくと、修正や問い合わせにも対応しやすくなります。
配信アプリごとの明細を、年間集計へつなげる
複数のアプリを使う場合は、最初から一つの合計額へまとめず、サービスごとの内訳を残してください。たとえば、配信で獲得した報酬、イベント賞金、紹介報酬、動画投稿に対する報酬が同じ画面へ表示されていても、対象期間や確定条件が違うことがあります。まず明細どおりに行を分け、最後に年間合計を計算してください。
一つの明細につき、少なくとも「対象期間」「報酬の内容」「表示された総額」「手数料」「源泉徴収」「換金申請額」「入金額」「通貨」「証拠ファイル」を対応させます。報酬がポイントで表示される場合は、ポイント数だけでなく、円へ換算された画面も保存します。交換率が変わるサービスでは、後から現在の交換率を当てはめず、実際に適用された条件が分かる資料を使います。
銀行口座への入金は、同じ月の報酬とは限りません。前月分が翌月に支払われる場合、年間表の「報酬の対象期間」と「入金日」を別の列にします。二つを分けておけば、十二月分が翌年に入金された場合や、最低換金額に届かず残高が繰り越された場合も、事実関係を説明できます。
案件報酬は、配信アプリの報酬と別の明細になることがあります。契約書、発注書、請求書、検収連絡、支払通知を一組にし、税込・税抜、源泉徴収、交通費や商品提供の有無を確認してください。商品の提供を受けた場合は、商品名、受取日、案件との関係を記録し、金銭の振込がないという理由だけで一覧から外さないようにします。
月末の照合では、年間表の入金額と通帳を一件ずつ対応させます。複数月分がまとめて振り込まれた、手数料がまとめて差し引かれた、返金や取消があったなど、差額が出た理由を明細へ書き加えます。理由を確認できない差額は、金額を合わせるために調整せず、契約先へ問い合わせる項目として残してください。
帳簿と証拠書類は役割を分けて保存する
帳簿は、収入と必要経費を計算できるように取引を並べた記録です。報酬画面、請求書、領収書、通帳は、その記録の内容を確かめるための資料です。領収書を保存しているだけでは年間の所得を計算しにくく、表へ入力しただけでは金額の根拠を確認できません。両方を対応させます。
国税庁の案内では、事業所得などがある白色申告者にも記帳と帳簿書類の保存制度があり、業務に係る雑所得についても前々年の収入金額が一定額を超える場合に現金預金取引等関係書類の保存が必要です。さらに、前々年の業務に係る雑所得の収入金額が一千万円を超える場合には、確定申告書へ収支内訳書などを添付する要件があります。
これらの基準は、今年の所得額だけを見て決めるものではなく、前々年の「収入金額」を使うものがあります。現在の売上や所得と混同せず、どの年の、どの数字を判定に使うのかを確認してください。保存期間も所得区分や書類の種類で異なるため、「確定申告が終わったから全部捨てる」という扱いは避けます。
ファイルを電子保存する場合は、年月と取引内容から探せるようにします。たとえば「2026-04_配信サービス名_報酬明細」「2026-04-18_マイク購入_領収書」のようにそろえ、帳簿の行にも同じ識別名を入れます。申告後に金額を確かめる必要が生じたとき、帳簿から証拠書類までたどれる状態を保ちます。
申告前に用意する書類を、自分の条件で確認する
必要書類は全員共通ではありません。給与がある人は源泉徴収票、配信や案件の報酬明細、経費の帳簿と証拠書類、控除に関する証明書などをそろえます。申告書にはマイナンバーの記載と本人確認が必要です。電子申告か書面提出か、税務署等で作成するかによって確認方法が異なるため、その年分の提出案内に従います。
源泉徴収票は申告書への添付や提示が不要でも、申告内容を作るための数字は必要です。「添付しない」と「手元になくてもよい」を混同しません。配信報酬の明細も同様に、提出を求められていない書類であっても、総収入や源泉徴収額を確かめる資料として保存してください。
氏名、住所、マイナンバー、銀行口座などを提出するときは、税務署、契約先の正規画面、正式に案内された提出先を利用します。配信コメントや非公式な個人アカウントへの送信は避け、提出先と利用目的を確認してください。
給与、住民税、扶養、社会保険を一つの金額で判断しない
会社員やアルバイトの給与、所得税の確定申告、住民税、税法上の扶養、健康保険の被扶養者認定、勤務先の家族手当は、それぞれ確認する制度と窓口が異なります。配信収入がいくらだったかという一つの数字だけで、すべての結果を決めることはできません。
税法上の扶養は、対象年の合計所得金額や親族関係、生計を一にしているかなどの要件で判定します。健康保険の被扶養者認定は加入している保険者の条件を確認してください。学生の場合は、税や保険とは別に、学校の規則や奨学金、家族の勤務先が支給する手当へ影響する可能性もあるため、制度ごとに分けて問い合わせてください。
会社員が副業として配信する場合、税務手続きとは別に勤務先の就業規則や届出方法を確認してください。厚生労働省の副業・兼業に関する案内でも、本業への支障、秘密漏えい、競業、長時間労働などを分けて考える必要があります。「住民税の支払方法を選べば勤務先へ必ず分からない」といった断定はせず、勤務先の規則と自治体の取扱いを個別に確認します。
契約終了や退会の前に報酬資料を保存する
配信アプリや事務所との契約を終了すると、管理画面へ入れなくなったり、過去の明細を取得しにくくなったりすることがあります。退会前に、契約書、報酬計算、手数料、支払日、未受取報酬、源泉徴収、年間明細を保存してください。規約変更の通知がある場合は、契約時の条件と変更後の条件を分け、どの期間にどちらが適用されたか分かる状態にします。
口頭やメッセージで報酬条件を確認した場合は、確認日、質問、回答、担当窓口を記録してください。税務上の結論を事務所や配信アプリの説明だけで決めるのではなく、報酬の事実を確認する資料として使ってください。税区分や申告要否は、その資料と自分のほかの所得を合わせて公的窓口や専門家へ確認します。
相談するときは、答えに必要な条件を一枚にまとめる
税務署や税理士へ相談するときは、「ライバーですが確定申告は必要ですか」とだけ聞くより、条件を整理して伝えたほうが具体的な確認ができます。対象年、給与を受けた勤務先の数、年末調整の有無、配信の総収入、必要経費の候補、ほかの所得、源泉徴収額、活動の継続状況を一枚にまとめてください。
報酬の受け取り方も説明します。アプリ内ポイントなのか、円で確定するのか、換金申請が必要なのか、外貨なのか、手数料や源泉徴収があるのかを明細で示します。所得区分を確認したい場合は、配信頻度、契約、設備、帳簿、案件活動など、活動の実態が分かる資料も用意します。
回答を受けたら、相談日、相談先、質問時に伝えた条件、回答内容を記録してください。翌年に制度や活動内容が変わった場合は、前年の回答をそのまま使わず、新しい条件で確認してください。税務署、自治体、健康保険の保険者、勤務先では担当する制度が違うため、一つの窓口の回答をほかの制度へ広げないようにします。

確定申告までの確認手順
- 対象年を決める:一月から十二月までの報酬と支出を集めます。
- 収入を漏れなく並べる:配信報酬、広告、案件、紹介報酬などをサービス別に整理してください。
- 総額と入金額を分ける:手数料や源泉徴収が差し引かれる前後を明細で対応させます。
- 必要経費の候補を整理する:配信との関係と私用部分の分け方を記録してください。
- 所得区分を確認する:活動の実態と帳簿書類を基に、事業所得か業務に係る雑所得かを確認してください。
- 給与とほかの所得を加える:20万円という数字だけで判断せず、給与や年末調整の条件も確認してください。
- 必要書類をそろえる:本人確認、源泉徴収票、報酬明細、帳簿、控除書類を自分の条件に合わせて準備してください。
- 制度ごとに確認する:所得税、住民税、扶養、社会保険、勤務先の規則を分けて確認してください。
よくある質問
配信収入が20万円以下なら何もしなくてよいですか?
20万円は全ライバー共通の売上基準ではありません。給与の状況など一定の条件のもとで、給与所得と退職所得以外の所得金額を確認するときに使われます。住民税については住所地の市区町村の案内も別に確認してください。
振り込まれた金額だけを売上にすればよいですか?
手数料や源泉徴収が差し引かれている場合、振込額だけでは報酬総額を確認できません。報酬画面、支払明細、通帳を対応させ、総額、差引項目、実際の入金を分けて記録してください。
配信に使ったスマートフォンは全額を経費にできますか?
私用にも使うものは、「配信に使った」という理由だけで全額を必要経費にできるとは限りません。業務に必要な部分を明確に区分できるかを確認し、利用実態と分け方を記録してください。
源泉徴収されていれば申告は終わっていますか?
源泉徴収は、報酬から所得税等があらかじめ差し引かれている状態です。年間の所得と控除を計算した結果とは別なので、申告の要否をあらためて確認してください。
配信収入は必ず雑所得ですか?
一律には決められません。事業所得か業務に係る雑所得かは、活動が社会通念上事業といえる程度かなど、実際の活動状況で判断されます。継続状況、収入、活動内容、帳簿書類を整理して確認してください。
確定申告書に支払調書や源泉徴収票を添付しますか?
国税庁の令和七年分の案内では、源泉徴収票等は申告書への添付または提示が不要とされています。ただし、税務署等で申告書を作成する場合には持参するよう案内されています。提出方法と対象年分の案内を確認し、金額を記載するための資料は手元に保存してください。
最後に確認したいこと
確定申告で最初に行うのは、税額を推測することではなく、対象年の事実をそろえることです。配信アプリの報酬画面、案件の明細、通帳、経費の領収書、給与の源泉徴収票を集め、総収入、必要経費、所得、実際の入金を分けてください。そのうえで、給与の状況、所得区分、申告条件を対象年分の案内へ当てはめます。
前年と同じ活動でも、制度や金額が変われば結論が変わることがあります。申告する年分の手引きを開き、古い基準をそのまま使っていないかも確認してください。この記事だけで申告義務や税額を確定せず、条件が判断しにくいときは、資料をそろえて税務署や税理士へ確認してください。


